贈与税は、個人間で財産が移動する際に重要な役割を果たす税金です。この記事では、贈与税の基本原則である「暦年課税」と、特に夫婦間での贈与に関わる贈与税の配偶者控除「(通称)おしどり贈与」の特例に焦点を当て、それぞれの計算方法と適用条件について詳しく解説します。
暦年課税の原則
暦年課税は贈与税の基本的な課税方式で、1人の人が1年間(1月1日から12月31日)に受け取った贈与財産の合計額が基礎控除額110万円を超えた部分に対して課税されます。この制度により、年間合計が110万円以下の場合、贈与税は発生せず、申告も不要です。非課税となる特定の財産として、個人からの香典や見舞金、扶養義務者からの生活費や教育費があります。
贈与税の計算式は以下の通りです:
贈与税額=(贈与財産の合計額−110万円)×税率-控除額
税率と控除額は、課税価格の区分によって異なり、18歳以上の子や孫が直系尊属からの贈与の場合、特定の条件下でより有利な税率が適用されます。
おしどり贈与の特例(贈与税の配偶者控除)
結婚してから20年以上が経過した夫婦間で、自宅不動産またはその購入資金の贈与が行われた場合、基礎控除110万円に加えて最大2,000万円までの配偶者控除が認められる「(通称)おしどり贈与」の特例があります。この特例により、適用条件を満たす夫婦は、贈与税が非常に低額になるか、全くかからない場合があります。
特例適用の条件は以下の通りです:
- 戸籍上の婚姻期間が20年以上であること。
- 国内にある居住用家屋・居住用不動産またはその取得資金であること。
- 過去にこの特例の適用を受けていないこと(同じ配偶者からは一生に一度の適用)。
- 贈与を受けた翌年3月15日までに居住用として使用し、その後も使用予定であること。
- 贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の確定申告書を提出すること。
事例を見て、深掘りしよう
さて、ここまで原則や計算式について説明しましたが、正直ピンとこない方も多いのではないでしょうか。ここでは具体的な事例を見て、もっとイメージしやすくしたいと思います。
暦年課税の具体的な計算例
事例1: 子供への現金贈与
- 状況: 親が子供に年間で1,200万円の現金を贈与した。
- 計算:
- 贈与財産の合計額: 1,200万円
- 基礎控除額: 110万円
- 課税対象額: 1,200万円 - 110万円 = 1,090万円
- 税率: 40%(1500万円以下の部分)
- 控除額: 0万円
- 贈与税額: 1,090万円 × 40% - 190万円 = 246万円
おしどり贈与の特例の具体的な計算例
事例2: 配偶者からの自宅不動産贈与
- 状況: 夫が結婚25周年を記念して、妻に自宅不動産(評価額2,500万円)を贈与した。
- 計算:
- 贈与財産の合計額: 2,500万円
- 基礎控除額: 110万円
- 配偶者控除額: 2,000万円
- 課税対象額: 2,500万円 - 2,000万円 - 110万円 =390万円×20%=78万円-25万円=53万円
- この事例では、配偶者控除「(通称)おしどり贈与」を適用した結果、贈与税がかからない。
まとめ
贈与税における暦年課税とおしどり贈与の特例は、贈与を受ける際に知っておくべき重要なルールです。特に長年連れ添った夫婦間での不動産や購入資金の贈与を考えている場合、これらの特例を活用することで税負担を大きく軽減できる可能性があります。適用条件や必要な手続きを正確に理解し、賢く利用していきましょう!